それは

それは絶対的な救いというか一人類としての根源に刻み込まれた原風景というか
もはやこれを、この風景を真実描写するすべなど何もないと言うことを私はその時悟るまでもなく知っていました
それは登山というより一つの精神の世界であり、この世におけるもっとも観念に近いなにか、であるからです
三時間半前に通過した雲海はすでに1400mの下方にあって、その真白な海が2000kmの彼方まで見渡せるのです
やはり、地球は丸いのだな。と、かつても得たことのある実感をいままた再び感ぜざるを得ないのです
ありきたりな言葉を使うなら「心が震える」とでも言えば良いでしょうか「ひとりでに涙がおしとどめようもなく溢れ出る」とでも言えば良いでしょうか
私はその時ひとり声にならない嗚咽を洩らしていたと思います
あーきもい
それは真のハイアーグラウンド、より高い精神次元への窓、あるいは巨大な鏡、深層意識へのチャンネルなのです
人はこういう時うーとかあーとかいうのが精一杯なんだなと、そう思ったりするのです


まあだからなに?って話ですが…