無職のおわり

去年の春に退職してからまもなく10ヶ月が経つ。この10ヶ月を振り返ると何もない。空だ。いったい何をして過ごしたのかまったく覚えていない。いややったことは分かっているんだが、あまりにもスカスカで信じられないと言う方が良いか。なにしろ、ゲーム、ネット、寝る、食べる、テレビを観る、の他は、月に2回ハロワに行くことと、だいたい月1の免許の講習ぐらいで、残りの時間は極力金を使わないように過ごしてきた。タバコは止めることができなかったが
予定としては訓練校に入ってもうあと6ヶ月はヒモ付きでいられたはずだったのだが残念なことに落ちてしまった。落ちてしまったこと自体に落ち込むわけではないが、新しい人生の糸口がスルっと逃げていったような感覚もした。
とは言っても気づけば10月には前年と同じぐらいの収入高になっていたので「もう今年はこれでいいかな」という気がしたのも事実。だが、それ以上に生活のあらゆる面でモチベーションが低下しているのを実感した
いま進行中の内装作業はまったく進まなかったし、バイクは手放してしまったし、原付にもほとんど乗らなくなった
あれほどマメに行っていたメンテナンスもすっかりやらなくなった
考えがまとまらず、大きな買い物など金を使う決断ができなくなった
何につけてもポジティブなイメージが持てないというか、「別にそれ今やらなくても困らないよね」という意識が先に立ってしまう


仕事をしていない、働いていない、会社員あるいは社会人という身分でない、労働という形で社会と関わっていない、ということ、それに定期的な収入がない、ということがこれほど自分にとって大きな影響を及ぼすとは思いもしなかった
先の見えない状況で、手持ちの資金を無為に浪費するのはとてつもない損失になる可能性がある。そして大抵の消費を伴う快楽は、この現金を減らすことによる損失感に打ち勝てない。明らかに得をすることにしか大事な金を出せない。バイク趣味に金など使えない。明らかな得がある、あるいは明らかな損失を防ぐ、それ以外に出費するのは単なる快楽であり、ギャンブルでしかない。だがいつかリスクをとらなければ、いずれ手持ちの資金は尽きるだろう。じゃあそれは"いつ"なのか
それまでの4年で少々まとまった貯金を作ってしまった、というのもあるいは影響したのかも知れない。逆に一切現金がなければ…いやそれだとどっちにしても金は使えないか。
とにかく、人生何度目かの「極力現金を使わないモード」に入ったわけだ
まあ働いているときからいつかはこういう状態になるような気もしていたので、極力定期的な支出を作るのを避けてきたのもあって、今の貯金額ならあと3年はこの生活を続けることはできるだろう
悔やまれるのは、あの人生を破壊したブラック勤めの後に、今回のようにハローワークを頼ることができていたら、ということだ。そういうアドバイスをしてくれた人も身近にいたのに、そのときはまったく動くことができなかった。というか自分から何かをすることができる状態ではなかった。振り返ってもあのときの自分はおかしかったと思う
話が反れた
金を使わなくても、テレビとネットとゲームと図書館さえあれば人生というのはそれなりに豊かで楽しい。だが少しばかりの貯金があることが、どれほど心の支えになったか。また、それが目減りしていくということがどれほど心を凍てつかせることか


そんなこんなでこの一ヶ月ほど、ちょこちょこ現場に呼ばれるようになってみると、不思議なことにモチベーションも回復していく
すくなくとも「稼いだ分からちょっとばかり使ったって良いじゃないか」という鷹揚な気分が沸いてくる。現金なもんである
こうやってまとまった文章を書く気力、というのもこの10ヶ月間まったくなかったのだが、こうやって書くことができるようになった
思い当たるのは「最近仕事に呼ばれている」ということと「前いた会社が完全に崩壊した」というニュース。「あーやはり仕事にまつわる人間関係に依存していたんだなぁ」というか「それが思っていたより大きかったんだなぁ」と
おそらく来月からまた「社員」という身分に戻るんだろう。望んだわけでも自分からなにかしたわけでもないから、これは喜ばしいというより「ヤバイ」というべき状況なのかもしれないが、貸した金が返って来なくなるのも困るし、もう少し状況をコントロールできるかやってみても良いかもしれない
あとはエクジットをどうするか
できれば、もう一度ハロワのお世話になって今度こそは訓練校に入りたいんだが…さて…