- 作者: よしもとばなな
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/07/01
- メディア: 文庫
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「金」は社会と自分のつながり、「SEX」は身体と自分のつながり、「オカルト」は世界と自分とのつながり。この三つのつながりが、どれも突出することなくバランスよく存在している。
特に、この主人公の女性と彼が、現代のこの世界の中で、どのようにお金を稼いでいるかが、非常に納得できるように書かれている。こういうふうにケーキや洋食を出せば、そこそこの売上はあるだろうと思う。最近、ばななさんはそこにこだわっているらしいが、これは本当にうまくいっていると思う。だから、ハッピーエンドにも経済的な裏付けがある。
ただ、当然、社会とリアルにつながる為に、身体や世界と切離されては意味がないわけで、同時に、彼女は、「この彼とこれから続けていくSEXは気持ちいいだろうな」と考えつつ、
もしも、もしもあの部屋で彼らを見てなかったら、私たちは結婚しただろうか?
などと考えるのである。「彼ら」とは表題である幽霊のことで、ここにおいて、金とSEXとオカルトがひとつに閉じて、短いこの物語はきれいに終わる。
「油がのりきった」などという言い方が最も似合わない人ではあるのだけど、ばななさん、いよいよ円熟期をむかえましたね。
2004-12-26