デッドエンドな幽霊の思い出という夢だったのさ

デッドエンドの思い出 (文春文庫)

デッドエンドの思い出 (文春文庫)

「金」は社会と自分のつながり、「SEX」は身体と自分のつながり、「オカルト」は世界と自分とのつながり。この三つのつながりが、どれも突出することなくバランスよく存在している。

特に、この主人公の女性と彼が、現代のこの世界の中で、どのようにお金を稼いでいるかが、非常に納得できるように書かれている。こういうふうにケーキや洋食を出せば、そこそこの売上はあるだろうと思う。最近、ばななさんはそこにこだわっているらしいが、これは本当にうまくいっていると思う。だから、ハッピーエンドにも経済的な裏付けがある。

ただ、当然、社会とリアルにつながる為に、身体や世界と切離されては意味がないわけで、同時に、彼女は、「この彼とこれから続けていくSEXは気持ちいいだろうな」と考えつつ、

もしも、もしもあの部屋で彼らを見てなかったら、私たちは結婚しただろうか?

などと考えるのである。「彼ら」とは表題である幽霊のことで、ここにおいて、金とSEXとオカルトがひとつに閉じて、短いこの物語はきれいに終わる。

「油がのりきった」などという言い方が最も似合わない人ではあるのだけど、ばななさん、いよいよ円熟期をむかえましたね。

2004-12-26