45分

その時、溢れ出る愛液だけが私たちの真実だった
私が与えたと信じた残酷さを、彼女もまた感じていただろうか、それとも些細な出来事の一つとして、日々の倦怠の中に埋もれてしまっただろうか
私にとっての、その"救い"が彼女にも同じ傷を負わせたのなら、あの夜を切ない痛みとともに思いだすことがあるのだろうか、ホテルへと向かう車の中で…
あの時、私の内に去来した胸えぐられる痛みに彼女は気付いただろうか、それは私の独りよがりな行為でしかなかったと彼女は気付いただろうか、私と同じように、失った過去をそこに見い出しただろうか
愛などと呼べよう筈もないたった45分間の邂逅に、まるで夢でも見たかのような不確かな一時に、何がしかの意味をもたせることができるのなら、それはその残酷さだったのか、それとも、いつまでも残るこの痛みか…


デリヘル嬢と客、という関係の他に、私達の間に確からしいものは何一つ無かった。ただ、その愛液の味と握り返された手のひらの感触以外には。