米軍のNGSW(次世代分隊火器プログラム)

次世代分隊火器プログラム - Wikipedia
Next Generation Squad Weapon - Wikipedia

ちょっと調べてたけど、NGSWで採用された6.8x51mm (.277 Fury) ってこれ中間口径弾薬というより実質的に7.62mm回帰だよな
むしろ若干ハイパワーというか

.277 FURY弾 - Wikipedia
.277 Fury - Wikipedia

リム径はほぼ同じで薬莢長は全く同じ(51.18mm (2.015in))
弾丸全長は6.8x51mmの方がわずかに長いか

- 6.8x51mm 7.62x51mm 5.56x45mm
弾丸径 7.06mm 7.82mm 5.69mm
リム径 11.99mm 12.01mm 9.60mm
薬莢長 51.18mm 51.18mm 44.70mm
全長 71.76mm 69.85mm 57.40mm
最大圧 550MPa 415MPa 430MPa

7.62x51mm NATO弾の最大圧60,200psi (415MPa)に対して6.8x51mmの最大圧は80,000psi (550MPa)
高い薬室圧力に耐えるために真鍮製のケースとステンレスのリムをアルミワッシャーで結合したハイブリッド薬莢になっている
つまり7.62mm NATO弾の口径を少し小さく(弾頭を小さく・軽く)して火薬のパワーを増やした感じか?

以前にも6.8x43mm SPC*1って中間弾薬があって、これはどっちかっていうと5.56mm NATO弾を大口径化して貫通力やストッピングパワーを高めようという感じだったが結局採用・普及はしなかった

\ 6.8x43mm SPC 5.56x45mm NATO
弾丸径 7.06mm 5.69mm
リム径 10.72mm 10.72mm
薬莢長 42.57mm 44.70mm
全長 58.80mm 57.40mm

要求仕様の「制圧距離3,900ft (1,200m)」っていうのが良く分からないな、有効射程とも最大射程とも違う概念だ

5.56mm弾に比べて携行弾数は減って重量も増えるけど、(ベトナム戦争の頃とは違って)ある程度訓練の行き届いた兵を前提として良いなら、(特にアフガニスタンの山岳地帯のような長いレンジでの交戦において)小口径弾を連射でばら撒くより精度の高い強力な単射の方が制圧効果として有効っていう運用思想の大転換、というか大回帰だ


新しい射撃統制装置もトライアルされてて、ロングレンジでの射撃精度を高めるために新しい射撃統制装置(弾道計算付きの光学照準器+レーザー照準アタッチメント)も同時に制式化してるんだけどこれがけっこうすごい
というかこれが次世代分隊火器のキモだな
あとサプレッサーが標準になってるのも大きな変化だな


倍率1~6倍の可変倍率でターゲットまでの距離測定、方位表示、弾道計算、ターゲットへのマーキングと分隊内での共有?までできるの?やばすぎ
5.56x45mm弾とか7.62x39mm弾の旧世代火器が相手だとアウトレンジから一方的に制圧できちゃうぞ


おそらく5.56mm弾と大量にあるM4も無くなるわけじゃなくてPDW的な運用とか、クロースレンジでの作戦とか、状況で使い分けるんじゃないかな


で、6.8x51mm弾を使うXM250の上位に、既存のM240 (7.62x51mm)とM2(.50 BMG)の中間的な.338ノルママグナム弾*2を使用するSIG MG338と、50口径のBarrettの置き換えで同じく.338ノルママグナムを使用するMRAD*3が既にSOCOMが発注済みらしく、クロースレンジでは5.56x45mmか.300 BLK*4を、通常レンジでは6.8x51mmを、それ以上のレンジには.338ノルママグナムか.50 BMGという使い分けになっていくんだろうか

これで制式拳銃・制式ライフル・分隊支援火器が全部SIG Sauerになったわけで、これまでのFNとの儚い蜜月が完全に終わって米軍はこれからSIG Sauerとどっぷり深いお付き合いをしていくつもりっぽい


しかし7.62x51mm NATO弾相当の威力が欲しかったならSCAR-Hでも良かったような気がするんだが7.62x51mm or SCAR or FN製を採用したくない積極的な理由があったんだろうか
7.62x51mmの有効射程が800mとして、それを超えるレンジでの交戦を想定しているということか
5.56x45mm弾のパワー不足はかなり前から言われていたことではあるし、「より強力な弾を」という要望は分かるとして、そこから7.62mmと5.56mmの中間ではなく、一気に7.62x51mm弾を超えるパワー / レンジという要求になるのがすごいなと