EV関連覚え書き

日本がEV普及率100%になったとき、必要とされる電力量はどれぐらいになるのか

2019年の日本の自動車の年間ガソリン消費量(自動車燃料消費量統計年報(令和元年度分))は495億リットル(4,950万kl)

自家用・営業用合わせたガソリン車の年間走行キロが6,200億km(620,000・百万km)として、ガソリン車すべてがEVに置き換わるとする
仮にEV全体が日産サクラ(124Wh/km=約8km/kWh)並みの電費としても768.8億kWh
日産リーフ並みの155Wh/km(6.45km/kWh)とすると961億kWh
2020年度の日本の発受電電力量は約10,000億kWh(発電設備と発電電力量|電気事業連合会)なので

495億リットルのガソリン消費が無くなるのと引き換えに、少なくとも7.7~9.6%の電力需要増

原発1基の発電能力が100万kW、設備利用率が80%として原発1基の年間発電量は70億kWh

2021年度の国内原子力発電の設備利用率は24.4%、総発電電力量も708.5億kWhでしかないが(2021年度の原子力発電設備利用率は24.4% | 原子力産業新聞

稼働している10基のみで考えると、認可出力の合計は995.6万kW、設備利用率は80%*1となり、前述の原発1基100万kW=70億kWhはおおよそ妥当な概算と言えよう

つまり大雑把に言って、ガソリン車がすべてEVに置き換わると、原発なら11基~14基分の発電電力量に相当する電力を1年間に消費する
10%なら1.1~1.4基、EV普及率7~9%毎に原発1基分の計算になる

おなじように768.8億kWhを火力発電で置き換えると、石油火力発電の燃料消費原単位が4,503kWh/klとして*2、768.8億kWhの電力を作るのに170.7億リットル(1,707万kl=比重0.85として1,451万トン)、石炭(2,915kWh/t)であれば2,637万トン、LNG(7,050kWh/t)で1,090万トンに相当
自動車の走行に使われるガソリンが495億リットル(4,950万kl=比重0.74として3,663万トン)であるから、それに比べれば当然消費量は少ない

太陽光で換算するとおよそ1,000平方km(10万ヘクタール)の土地面積に相当する(10,000kWhあたり130㎡で計算)

2021年度の太陽光の発電実績は年間で約190億kWhということを考えると、768.8億kWhは全体のわずか7.7%とはいってもけして小さな数字ではない

とはいえ1日の電力需要は一定ではなく(電力需要の負荷平準化 - 電力事情について | 電気事業連合会

電力需要の低い時間帯に充電してピーク時はV2Gを活用することにより負荷平準化(ピークシフト)は可能であろうから、単純に11基~14基の原発(ないしそれに相当する発電能力)を増やさなければいけない、ということには当然ならないが、ベースロード電源の拡充は必須で、コストとCO2削減を考えると既存原発稼働率アップ、新規の原発建設及び原則40年と言われる運転期間を超えてしまっている原発の置き換えは避けられない
また、ピークシフトを促すためになんらかのインセンティブを施すとすればその分のコストも電力価格に上乗せとなって返ってくることになる