トゥモロー・ワールド


監督はメキシコ出身のアルフォンソ・キュアロン(『リトル・プリンセス』『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』)
クライヴ・オーウェンキウェテル・イジョフォーは『インサイドマン』でも共演してたな
マイケル・ケインは良い味、というかおいしい役まわり
ジュリアン・ムーアの魅力がいまいちわからんので「こんなおばさんのために命賭けるの?」感は否めない


話の筋はざっくりしたものでドタバタはあるがシンプルなおつかい
頭を使って切り抜ける、とか目を見張るようなアクションで打開する、とかはない
ただただ巻き込まれ、周りの状況が主人公を押し流していくだけ
簡単に言えばやっかいごとに巻き込まれたおっさんがあっちゃこっちゃ逃げてるうちに誰かしらに助けられて脱出みたいな話


ただ「理由はわからないが生殖能力を失ってしまった人類」とその世界の中で唯一の希望として描かれるその赤子、と希望を失い荒廃してしまった(おそらくその前から崩壊していたであろう)世界の状況を対置して描き出すことこそがこの映画の力点だったろう
イスラム系テロリスト集団、暴徒化する流民、難民の抑圧、容赦なく打ち据えられ、跪かされ、引き回される人々、何語かもわからない呻き声、飢え、抑圧への怒り、流れ弾に当たってたくさんの人が死ぬ情景、キュアロン監督はシリアやアフガンの無慈悲をロンドンに出現させてみせた
それぞれの絶望、それぞれの絶望への向き合い方
自殺薬が普及するような絶望の時代の中で、たった1人の、18年ぶりに世界に産み落とされた赤子の命だけが、まばゆい希望の光を放っている
それは絶望しか残されていなかった世界に現れたただ1つの希望、ただ1つの未来


はっきり言ってSFとしての設定やプロットの仕掛けはたいした映画ではないし、やや中だるみもあるが、内戦状態を描くリアルさは特筆すべきものがあって、その中に篭められた「子供こそが未来であり希望である」というメッセージはシンプルながらも心を打つ
フィクションで描かれたことであっても今私たちを取り巻く現実の問題とリンクして考えることができる人だけが見るべき映画