印刷という革命 〜ルネサンスの本と日常生活〜 / アンドルー・ペディグリー著 桑木野幸司訳

印刷という革命:ルネサンスの本と日常生活

印刷という革命:ルネサンスの本と日常生活

  • p10 "ところが、印刷術が広範囲に拡散していくさなかに、出版業界の人々は早くも、この新たなテクノロジーへの盲信が間違いであったことを示す兆候を知ったのであった。単純なことである。要するに、そんなに大量の書物を刷ったところで消費できるほど読者がいなかったのである。" 1490年前後について

つまり財産としての書物、筆写文化の延長とは違った市場を開拓する必要があった
書籍市場の開拓・成立と"極度の"多様化
理想主義から実用主義への転換
出版ビジネスの成立→規制の流れ
高価な学術書→廉価な読み捨てにする類の本(←であるがゆえに印刷術の黎明期の歴史を綴ることが、今なお困難な課題となっている。)
グーテンベルグから150年後の1600年までに欧州の出版業界は35万タイトル1億冊←それだけの読者を開拓

第1部 はじまり

第一章 印刷時代以前の書物
書物の起源
冊子形式の本
古代末期または初期キリスト教時代(いつ?)
パピルス
巻物形式。特に湿気に弱い。保存のためには定期的に筆写を繰り返す必要がある
羊皮紙と冊子形式
3〜4世紀。
冊子
コデックス。ローマ帝国時代の携帯用筆記具。蝋版ないし石板2枚を蝶番で止めたもの

巻物→冊子への流れはキリスト教の成長と密接に関係

パリンプセスト
高価な羊皮紙を節約するため書かれた文字等を消し、別の内容を上書きした羊皮紙の写本。消した文字が時間とともに浮かび上がってくることがある
学問の保存
  • p21 識字率は、5−6世紀に急激に低下した

西ローマ帝国崩壊のため?
キリスト教が学術文化を保存する役割を徐々に担うようになる
書物(知識あるいは物語)は伝道の大きなツールにもなった

  • P22 "中世初期の写本文化がその頂点に達したのは、9世紀から11世紀にかけてのいわゆるカロリング朝ルネサンスにおいてである。豊かな装飾をまとった写本群がこの時期に生産された。"
  • p22 カロリング小文字体(←ローマン体の基となる@ルネサンス期)
  • p23 「続け書き」(スクリプティオー・コンティーヌア)
  • p23 "修道院における聖書の生産が頂点に達したのは、12世紀のことで、この時期までに、マーケットの需要は実質的に満たされていた。"
大学の出現

12世紀末、大聖堂付属の学校が恒久的な組織化し、13世紀に大学誕生

  • パリ、ボローニャ、スペイン、オクスフォード、ケンブリッジに新たな大学が次々と設立
  • p24 "新興のアカデミック文化の比類なき中心といえば、それはパリ大学であった。すでに13世紀中ごろにはパリを目指してヨーロッパ全土から学生や教師たちが集まってきていた。"

大学は膨大な量の書物を必要とする
大型の聖書から小型サイズのものへ
フォーマットの標準化

  • p25 "こうして出来上がった新しいタイプの聖書は引く手あまたで、、ほどなくして市場を席巻したのだった。とりわけ1240年から1280年にかけての生産量が桁外れに多く、そのせいで14-15世紀に作成されたものがむしろ希少価値を帯びるほどであった。市場は完全に飽和したのである。"
ペシア(分冊)制度
大学認定の書籍商が筆写用サンプルを部分ごとに一度に1セクションずつ有料で貸し出し
  • p26 "学生を購買層とした本の大量生産方式が確立した"

書籍業の成立

学者と貴族

1347-1349 ペストの流行
ヨーロッパ全土の人口の30%が死亡したといわれる
ペストによって書籍生産の拠点たる都市部にダメージ
ペスト後写本市場の成長期