絵が上手くなりたいんですけど、という質問の仕方がまずいのよ

「絵が上手くなりたいんですけれど、どうすればいいですか?」って聞いたときに、「一日中、ずっと絵のことを考え続けて、毎日地道に努力すれば上手くなりますよ。有名イラストレーターの○○さんは、中学時代から寸暇を惜しんで落書きを続けてきて(中略)血の滲むような努力を10年ぐらい続ければ、きっとプロ並みの上手さになりますよ」と返すようななやりとりが、ネット上では何度も繰り返されているのだけれども、これってフランス料理のシェフに料理の作り方を尋ねているようなものだよな。

俺が「腹減ったから何か適当なモン作れる、手っ取り早い方法知らね?」って聞いてるのに、「一流のフランス料理シェフになるためには下積みが云々、十年にわたる過酷な修行が云々」って聞かせられているような感じだ。

http://d.hatena.ne.jp/si-no/20111124/1322144982

まず、通常絵描きは自分のことを絵が上手いとは思っていない。自分より上手い人たちがたくさんいることを知っているし、実際たくさんいるのだし。
だからただ漠然と「絵が上手い」と言ったとき、絵描きの想定する「上手い」のレベルは大抵とてつもなく高い。上の喩えにならって料理でいうと、シェフとして店を切り盛りできるぐらいの技量を持ってはじめて「そこそこ描ける」とか「上手い」とか言われるレベル。そしてネット一般でいうところの「絵が上手い」というレベルだってそれほど低いとは言えないというかむしろ結構高い。
だから「絵が上手くなりたい」というのは、言い換えれば「不特定多数の人間に自分の画力を認められるレベルになりたい」ということで、それを絵描きに質問したとしたらそれはフランス料理のシェフ(もしくはシェフを目指す人)に「一流の料理人になるには?」と聞くのとほぼ等しい。だから答えとしては「人並みはずれた努力を毎日継続する」以外ありえない。


世の中には息をするように絵を描く人たちというのがいて、「絵が上手い」と一般に認知されてるのはだいたいそういう人たちだ。そういう人たちですら食えるわけではないのが絵の世界なので、質問者の想定する「上手い」が「中途半端な努力で中途半端に承認欲求満たされる」程度なのであればはじめからそのように聞けば良いのだし、そもそも「中途半端な努力で中途半端に承認欲求が満たされたい」のであれば「絵を描く」以外の道を選んだ方が得策だ。
まあつまり「腹減ったからなんか適当なモン作れる手っ取り早い方法」として「絵を描く」という行為を選択するのがそもそも間違ってるってことやね。まあ別にそこそこの努力でそこそこ見栄えのする絵を描くことができないってわけじゃないけどね


付け加えるなら「冷蔵庫の中にあるもので適当に美味しいもの(しかも自分だけではなくて不特定多数を納得させるレベルの)を作る」スキルというのはそんな簡単なことでもない。どんなことであれ、そこに「不特定多数を納得させるレベルの」という条件がつけばそれは簡単ではない。
想像してみろよ、料理するたびに顔も見知らん奴らから「味付けが薄い」だの「人参はもうちょっと薄く切ったほうが」だの「下手クソ」だの言われるってどういうことなのか。だいたいこういう質問する奴はただ批判されるのがイヤなだけ。だからいつまで経っても描かないし描けない。とっとと絵を描くのはあきらめて黙ってネトゲでも行って重課金ユーザーになって俺TUEEEしとけ、な?