戦場でワルツを

ドキュメンタリーとアニメを融合させた面白い手法によって掘り起こされた記憶の断片を繋ぎ合わせ、実写以上のリアリティを持たせることに見事に成功している。おそらく実写で同じことをしても胡散臭いものにしかならなかっただろう

アリ・フォルマン監督インタビュー
http://mainichi.jp/enta/mantan/anime/news/20091214mog00m200051000c.html

記憶を掘り起こすといっても、本作はノスタルジックな映画ではなく、むしろ乾いた空気が漂っている。約100人の元兵士に調査をして、「話したい」人たちに絞り込み、さらに脚本に沿って、客観的にふるいにかけていった。インタビューを撮影したものを基に、絵コンテを起こすという手法を取った。「意識と無意識、死への恐れ……シュールな体験をまとめるのに、アニメーションが最適だと思った」。たった6人のアニメーターという信じられないほどの少人数で、作業は困難を極めたが「弱気になることはなかった」と笑う。「アニメの伝統がない、ゼロから始めたので自由度があったのです。宮崎駿監督作品は全部見ました。ほかにフランスやアメリカのグラフィック・ノベルも参考にしました」と前向きだった。

アウシュビッツに送られる12時間前に結婚した両親は、戦後偶然再会してイスラエルに移住した。無神論者であるのも両親の影響だという。父は強制収容所から解放された日を自分の誕生日にしていた。「父の誕生日は自分で選んだ日だったのです。大人になって本当のことを知ったとき、私は悲しかった」と明かす。

たしかにデリケートな問題を描きながらも政治色はない。あくまでも監督自身にとってのパーソナルな体験として描かれているからだろう


観るべき映画、というのはやや言い過ぎかも知れないが、世界と対峙する手法の一つとして興味深い