超人 白鳥良栄の生涯

http://www8.ocn.ne.jp/~moonston/shiratori.htm

彼は常人をはるかに超えた体力と腕力の持ち主であったが、加えて特異な体質を持っていた。
 関節腔と靭帯の可動域が異様に広く、あたかも猫と同じように首さえ入るところがあれば、肩、手足、腰など、ほとんど全身すべての関節を自由に脱臼して抜けることができるのだった。
 また手足の裏の皮膚を収縮させ、吸盤のようにして貼りつくすべも心得ていた。
 彼は看守が視察にくる時間を綿密にはかり、天窓の木枠が腐りかけているのを知って、脱獄の成功を確信した。
 逃走の夜は暴風雨で、音も足跡も消してくれる絶好の日だった。
 彼は少し体を傾けて、両足の裏を一方の壁に密着させると、両掌を他方の壁に押しつけた。そして足裏と掌を交互にずりあげていく。さながらヤモリのように彼の体は上方へ難なく登りはじめた。
 体が傾いたまま天井に達すると、あらかじめゆるませていた天窓を頭突きで破り、瓦屋根に飛びのった。

まさにリアルシコルスキー!ほとんどバキの世界w
板垣がこの話を知らなかったとは考えにくいのでなんかしら影響したんではないかと邪推


しかし白鳥良栄の超人たるところは腕力のみで手錠を引きちぎり、60kgの米俵を両手に持って腕が水平になるまで持ち上げるというその圧倒的な膂力もさることながら、一日に30里(120km)を駆け、数ヶ月山に籠ることができるというその走破力とサバイバル能力にあるように思う。しかも、その生涯を見る限りにおいては、彼白鳥が過酷なトレーニングに打ち込んでいたとは思われないにも関わらずである。
もし白鳥が登山を指向していたなら、日本山岳界どころか世界の歴史に残るクライマーになっただろうなと夢想してみるのも面白い

破獄 (新潮文庫)

破獄 (新潮文庫)

破獄 [DVD]

破獄 [DVD]