リスク・マネジメント

リスクマネジメントの基礎知識
http://www.h5.dion.ne.jp/~heisan/manner/manner-c-29.html
リスクマネジメントのイロハ|エコネット
http://www.kk-econet.com/blog/

「危険」や「安全」は、ある状況をさしていいます。現代社会において経済活動の主体である企業の「絶対的な安全」はありえません。あるのは「今安全な状態である」ということです。安全な状態を未来においても希求したければ、解決すべき「リスク」を認識し、対処することが求められます(或いは「対処しない」、つまり静観する=「リスクの保有」という決定が求められます)。「危機」は予知不能で、何の前触れもなくやってくる状態のことであり、「危機」は受け止めざるを得えません。一方、「危機」は予知されたとたん、それは「リスク」として認識され、リスクへの対処が問われ、何らかの意思決定が求められます。

たとえば、交通事故それ自体は「危険」でありますが、交通安全が意識された瞬間、その危険は「リスク」に転じます。リスクマネジメントが「安全な状態」を生むのではなく、安全な状態の意識化が危険を「リスク」転じ、マネジメントを可能にします。つまり、リスクマネジメントとは、多くの人に信じられているような「危険でない状態をつくる活動」や「安全を保証する活動」ではありません(それらは、いわゆる「安全運動」や「安全教育」と呼ばれてきましたが、期待した効果がない場合が多かった)。

逆にリスクマネジメントは、「危険な状態」を想定して考え抜き、その状態の中で起こりうる様々なリスク要因を発見し、分析・評価し(リスク=発生の可能性×結果の重大性)、論理的に対応を決定し(リスクを回避・リスク移転・リスク低減・リスク保有)、実施し、その効果を認識し、もう一度見直しを行っていく(PDCA)意識的な活動です(「安全な状態」は、結果としてある条件下でもたらされるに過ぎません)。

別の角度から言えば、無意識や無責任で「リスクの保有」は決してできないと言うことです。(「臭いものにはフタ」式にリスク回避やリスク保有を考えている人は、「リスクとは危険を冒すこと」という発想です。「リスクをとる」とは、冒険することではなく「許容されるリスクの範囲内での選択」を意思決定する「責任行動」のことです。「何もしないリスク」も忘れてはなりません。

前回にも触れましたように、安全意識なきところでは「危険」も意識されず、内発的なリスクマネジメントの意思(意思決定の責任性)は生れません。「安全」がひとたび意識された瞬間、危険が「危険」から「リスク」へと転じ、人間の意識活動によってコントロールされるようになるのです。