殺人に関する短いフィルム

−退屈な毎日
−偶然が三人の運命を狂わす

87〜89年にかけてTVシリーズとして企画された『デカローグ』。『モーゼの十戒』を下敷きに1話完結の連作10話で構成され、その第5話にあたるのが本作のオリジナル。
目的意識を失った青年、自己中心的で嫌みなタクシー運転手、正義に燃える若手弁護士。本来ならば出会うはずのない三人の運命が、偶然の積み重ねによって"衝動殺人"という関係で結びつく衝撃の物語。テーマは「暴力そのものであり、それ以外はない」と監督は語る。
"暴力の行使"とは加害者もまた被害者となる同等なもの。さらには加害者を救う立場の人間でさえ"死刑"という判決を退けられず、加害者となる残酷さをいやおうなく見せつけられる(#誰が書いたか知らないが、この批評はいただけない)。感傷を排した鋭く冷たい映像は『ふたりのベロニカ』『トリコロール/青の愛』のスワヴォミル・イジャック。本作はより多くの観客へ広がりをもたせるため、弁護士になったばかりのピョートルの背景や幼くして死んだヤツェクの妹のエピソードをオリジナルに追加した劇場公開版である。

1987年/ポーランド/85分/カラー/35mm/ビスタ(1:1.66)/モノラル
1988年 グダニスク映画祭 グランプリ
1988年 カンヌ国際映画祭 審査員賞、国際批評家連盟賞
1988年 第1回ヨーロッパ(フェリックス)賞 作品賞

「運命を狂わす」っつー程でもないし、「衝撃の物語」なふうでもないがw
とても作品を理解しているとは信じ難い批評が付いているものの、「暴力そのものであり、それ以外はない」という監督のコメントに救われる。